クリティカル・パス導入と活用に向けて
信州大学医学部附属病院 由上 恵子
T はじめに
日本における医療費適正化政策への対応として、数年前からクリニカル・パスの導入を行なっている医療機関が増加してきている。当院においても平成11年からクリニカル・パス導入の取り組みが始まった。クリニカル・パス導入の経緯から現在の活用状況までを述べる。
U クリニカル・パス導入への取り組み
平成11年度に「適正な医療提供と在院日数の短縮化」に関する調査研究が実施された。この報告書の中で「チーム医療の基本に則り各職種が密な連携の基にインフォームドコンセントから始まる一連の診療を行なわなければならない。そのためには、患者・家族に納得ゆくまでわかりやすく、繰り返し、形として残る工夫をしながらインフォームドコンセントを行なう必要がある。」と述べられている。この報告で述べられていることを実践するためには、クリニカル・パスの導入が最適であると思われたが、この時点では病院としてクリニカル・パスを導入するという取り組み起こらなかった。しかし、看護部ではクリニカル・パスに関する取り組みが必要と考え、同年に在院日数短縮化委員会(クリニカル・パス推進委員会)が設置された。この時点の調査では、院内でクリニカル・パスを作成・使用している部署は3ケ所であった。このため、委員会の活動は「クリニカル・パスとは」という学習会から開始した。
V 現在の活用状況と問題点
当初、委員会では看護師が患者の効果的な回復をめざして入院中のケアを行ない、看護サービスの質を保証し実践することが重要だと考え、9つの症状別クリニカル・パス(症状別のパスは、ケアマップと名称を統一)を作成した。
ケアマップは、平成12年度に完成し、半年間使用してみた。この時出された意見を基に、再度検討を行ない修正をした。この1年半の間に、病棟により看護婦主導であったり、医師主導であったりとクリニカル・パス作成の経緯は異なるものの、疾患別クリニカル・パスが作成され使用され始めた。平成13年度には、チーム医療推進委員会がたち上がり、病院としての取り組みが開始された。
現在では、60の医療者用パスが完成し、患者用パスも20あまり完成し使用されている。
しかし、作成の開始が病棟毎に開始されたため,院内で統一されたフォーマットになっていない。クニカル・パスとは言えない現状追認型の単なるフローチャートに近いものもあるという状況である。また、当院に入院される患者は大学病院という性格上、複数の疾患に罹患している。そのため、クリニカル・パスを当初から使用できない、あるいは、バリアンスが発生しやすい患者が多のが現状である。
W おわりに
作成されたクリニカル・パスは、患者には治療経過がわかりやすいと好評である。また、血管造影や内視鏡検査等のように、他科の医師により実施される検査の場合、クリニカル・パスを使用することで、医療チームのコミュニケーションがはかれ、医療や看護の提供が
確実に行なえる。当院では来年度、電子カルテが導入される予定である。現在使用しているクリニカル・パスを基に見直し、より浸透をはかっていきたい。