標準化を目指したクリニカルパスの導入―結腸切除術に対する有用性について

相澤病院   大森敏弘

 

【はじめに】当科では20014月よりクリニカルパス(以下パス)の導入を開始し、現在19種類のパスが運用され、新入院患者数に対するパスの運用率は70%を超えている。パス導入に際しEBMに基づいて診療内容を標準化してパスを作成した。外科領域における標準化を目指したパス導入の有用性を、結腸切除術について検討した。

【対象及び方法】対象症例はパス導入前の20002月より20014月までの待機的結腸切除術49例と、パス導入後20017月から20029月までの待機的結腸切除術の62例である。標準化として1)術前日投薬の標準化(緩下剤ニフレック4L、睡眠導入剤マイスリー5mg)2)SSI防止にための予防的抗菌剤投与の標準化(CMZ2g/day3日間)3)術前剃毛の廃止(必要時手術室にてクリッパーで除毛)4)術前後の輸液の標準化、止血剤ビタミン剤投与の廃止、5)術直後の胃管抜去、6)膀胱訓練の廃止、7)閉鎖式ドレーンに統一、8)術後創処置の標準化(カラヤヘッシブによる被覆)などを行った。術後在院日数、総医療費、1日あたりの医療費、経鼻胃管留置日数、膀胱バルーンカテーテル留置日数、腹腔ドレーン留置日数、術後食事開始日、抗生剤投与状況、SSI発生率についてパスの有用性を検討した。

【結果】術後在院日数はパス前22.1日、パス後15.1日で短縮した。総医療費はパス前1025370円、パス後957110円、1日あたりの医療費はそれぞれ46301円、63121円であった。経鼻胃管留置日数はパス前1.3日、パス後0日で、膀胱バルーンカテーテル留置日数はパス前3.9日、パス後2.0日で、腹腔ドレーン留置日数はパス前8.2日、パス後5.2日でいずれも短縮した。術後食事開始日はパス前6.4日、パス後5.1日であった。抗生剤投与日数はパス前6.3日、パス後3.3日で短縮した。SSI発生率はパス前6.0%、パス後9.8%であった。パス導入により術後在院日数は短縮し、カテーテル留置期間は短縮した。総医療費はやや減少し1日あたりの医療費は増加した。抗生剤の使用量は減少したがSSIの発生率は変化がなかった。

【まとめ】パス導入により患者の身体的な負担は軽減した。術後在院日数が短縮し、1日あたりの医療費が増加して医療経営の効率化ができた。標準化が進んだことにより医療スタッフの負担が軽減した。