佐久総合病院におけるクリニカルパスの導入
佐久総合病院 副診療部長 西沢延宏
佐久総合病院でのクリニカルパス(以後、パスと略す)は平成10年8月に心臓血管造影検査を日帰りで行う事をきっかけに導入された。その後、パス研究会を発足させ、看護部有志が中心となって導入を図ってきた。
その後、平成11年2月に長野県ではじめての日帰り手術センターを開設するにあたり、日帰り手術でパスの作成・使用は必須であることから外科系の疾患を中心に一気に導入が進んだ。現在では、月に130件ほどの日帰り手術の全症例でパスを使用している。
しかしながら、パスの導入が進み医療の効率化・標準化が図られる科・病棟がある一方、全く導入が進まない科・病棟もあった。特に医師の無理解・反発が問題となった。
そこで、全病院的にパスの導入を進めるために、平成13年8月に全病院的に様々な職種から構成されるパス委員会を設立した。目的は、医療の質の向上、標準化・効率化、在院日数の短縮、病床混合化への対応とした。月に1回の定例の委員会で様々なパスの検討をする一方、武藤先生の講演会・パス大会(過去2回開催)・研修医を含む新入職員むけの勉強会などを開催してきた。また、全国学会にも積極的に参加しており、今年のパス学会には3題の発表を行った。
こういった中で使用されるパスはかなり増加してきており、現在院内全体で約80種類のパスが運用されている。パスの導入が進まない病棟もパス大会に参加するなどする中で進展を認めている。最近は、手術中・処置中の記録も組み込んだオールインワンパスの検討が進んでいる。
また、病棟の混合化に対応し、将来のオーダリング・電子カルテに対応する必要性があることなどにより、書式・記載方法の院内での統一を行っているところである。以前にくらべパスに対する理解は格段に進んできているが、なかなか受け入れられない科もあり、今後とも積極的な働きかけが必要である。
パス導入の欠点として、在院日数の短縮に伴う、病床稼働率の低下が問題となる。当院でも日帰り手術の導入とあいまってパスの導入が進んだこともあり、在院日数の短縮と共に病床稼働率の低下が認められた。平成10年度の平均在院日数18.4日、病床稼働率92.9%から、平成13年度の平均在院日数は16.1日、病床稼働率88.8%と低下してきている。一面では病院経営上マイナス要因であり、今後とも注意していく必要がある。